ブログ「鍼道 一の会」

35.太陽病(上)30条 攙入の条文

 いよいよ<辨太陽病脉證并治上>の最後の条文になりました。

 ところがこの条文、どうも意味が通じません。

 一般には、錯簡があるだろうと言われていますがどうなのでしょう。

 著者、張仲景の筆法が簡略なものとすると、この30条は後人の書いたものが紛れ込んでしまったのでしょう。

 意味が通じるように並べ替えて、意味付けされた解説もあります。

 しかし今回は、意味が通じないまでもそのままの意訳にとどめます。

 文中の陽旦とは、桂枝のことです。

 桂枝湯の別名は、陽旦湯です。

 さらりと、目を通して頂けたらと思います。

 

【三〇条】

問曰、證象陽旦、按法治之而増劇、厥逆、咽中乾、兩脛拘急而讝語。

師曰、言夜半手足當温、兩脚當伸。後如師言、何以知此。

答曰、寸口脉浮而大、浮為風、大為虛。風則生微熱、虛則兩脛攣。

病形象桂枝、因加附子參其間、増桂令汗出、附子温經、亡陽故也。

厥逆、咽中乾、煩躁、陽明内結、讝語煩亂、更飲甘草乾薑湯、夜半陽氣還、兩足當熱、脛尚微拘急、重與芍藥甘草湯、爾乃脛伸。

以承氣湯微溏、則止其讝語。故知病可愈。

問いて曰く、證(しょう)は陽旦(ようたん)に象(かたど)り、法を按じて之を治す。而(しか)れども増して劇しく、厥逆(げつぎゃく)し、咽中乾き、兩脛(りょうけい)拘急して讝語(せんご)す、と。

師曰く、夜半に手足當(まさ)に温まるべし、兩脚(りょうきゃく) 當に伸ぶべし、と。後(のち)師の言の如し。何を以てか此れを知らん。

答えて曰く、寸口脉浮にして大、浮は風と為し、大は虚と為す。風は則ち微熱を生じ、虚は則ち兩脛(りょうけい)攣(れん)す。

病形桂枝に象(かたど)り、因りて附子を加え其の間に參(まじ)え、桂を増して汗を出さしむ、附子は經を温む、亡陽(ぼうよう)するが故(ゆえ)なり。

厥逆し、咽中乾き、煩躁す、陽明内結(ないけつ)し、讝語(せんご)し煩亂(はんらん)す、更に甘草乾薑湯(かんぞうかんきょうとう)を飲む、夜半陽氣還(めぐ)り、兩足當に熱すべし、脛尚(な)お微(すこ)しく拘急し、重ねて芍藥甘草湯を與う、爾(しか)らば乃(すなわ)ち脛伸ぶ。

承氣湯を以て微しく溏すれば、則ち其の讝語(せんご)止む。故に病愈ゆべきを知る、と。

【意訳】

(質問)

 患者が現している症候を、法をもって桂枝湯証だと判断して治療を行った。

 ところが反って症状が悪化し、しかも厥逆、咽中乾、兩脛拘急、譫語などの症候が現れてきた。

 すると師は、このように言われた。

 夜半になれば手足は温かくなり、兩脛の拘急も治まり伸ばすことが出来るであろうと。

 果たして師の言われたようになったが、何を以てこのようなことをあらかじめ知ることが出来たのでしょう。

(回答)

 寸口は浮・大である。浮は風であり大は虚である。風は微熱を生じ、虚は兩脛の攣を引き起こす。

 病型は桂枝に似ているが、桂枝湯に附子を加えてさらに桂枝を増量して発汗させた。 附子は経を温めるので、亡陽している場合に用いるからである。

 ところが厥逆、咽中乾、煩躁、陽明内結、讝語、煩乱が現れた。

 そこでさらに甘草乾姜湯を服用させれば、夜半になって陽気がめぐり始め、両脚も温かくなる。

 それにもかかわらず脛が少し拘急するようであれば、芍薬甘草湯を与える。そうすれば脛は伸ばすことが出来るようになる。

 その後、承気湯で少し下痢をさせれば、譫語も止む。

 このように治療を進めれば、病が癒えると知ることができるのである。

 

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