1月28日(日)、小雪が舞う中、今年度第9回目の臨床医学講座を行いました。
今回はすべて治療実技を行う予定でしたが、少し遅れる受講生さんを待つ間、座長・稻垣先生に何か今ホットな話題をしてください!とお願いし、お話しくださいました内容をシェアいたします。
「実は今日の講座終了後、とある大学の試験を受けに行くんです・・・」とのことで、それに関連した話題を。
まずは1991年以降、医師と患者との関係性が大きく変化した経緯について。
それ以前の医師と患者の関係においては、ある程度 医師の主観的な感性および患者との情緒的なかかわりがあったと。(平たく言えば「俺についてこい!助けてやるぞ」そして患者さんは身を任せてついていく…といった感じでしょうか。)
1991年以降に統計学が医療現場に応用されるようになり、医師はそれに基づいた「標準治療」を患者に提供する立場となった。
そのことにより、標準治療におけるメリットとデメリット(リスク)を提示し、患者の意思で選択できるように変化してきた。
さらにそれによってまた患者側にも変化が起こり、何故自分がこの病気になったのか、その意味などを考え始めるようになってきたそうです。
そのような変化の流れの中にあると解説して頂きました。
加えてエビデンス(EBMという言葉を多くの方々は耳にしたことがあると思います)を取る際の統計学的基準について。そこに潜む問題点を、大変わかりやすく講義してくださいました。
東洋医学領域においても、昨今、エビデンスという言葉が盛んに使われるようになってきています。
西洋医学のような診断機器を駆使せず、脉診や腹診・背部兪穴診など、診断根拠や効果判定において大いに術者の主観が入る東洋医学において、果たしてエビデンスを取ることが出来るのでしょうか?
【西洋医学と東洋医学の疾病観の違い】
たとえば、西洋医学では「膀胱炎」という病名が付けられる病態に対して、薬剤などを用いて治療を行い、その結果を統計学的に評価します。
ところが、東洋医学においてはそもそも「膀胱炎」という病名が存在しません。
仮に「膀胱炎」の様相を呈する病に対して治療を行うとすれば、八綱・臓腑辨証など、東洋医学独自の物差しで病理を解いて治療を行いますので、まずもって八綱・臓腑辨証を標準化する必要があると。
加えて、術者の主観的感覚による診察行為(四診)をどのように基準づけるかという問題点も存在します。
さらに東洋医学の場合、「同病異治、異病同治」という言葉があるように、同じ症状を呈する病でも全く違う治法を用いることが多々あるため、標準化する上で多くの困難が伴う、とのことでした。
稻垣先生は、教員養成科時代に統計学をかなり専門的に学ばれたようです。
説明も非常にこなれて分かりやすく、ど素人の筆者でも理解し受け入れることが出来ました。
その他、現代医学が「QOL(生活の質)」を評価基準として取り入れている現状について述べ、QOLが向上したならば医学的評価が得られると。
鍼灸治療であれば、施術を受ける前と後のQOLについてアンケート等で調査を行い、有意に差が出た場合、鍼灸は医学的に効果があると認められるとのことです。
なかなか気の遠くなるような話でしたが。
先ずは皆さん、東洋医学で病を治療できる鍼灸師になることが先決ということで、ともに向上して参りましょう!
ということで、グループに分かれての臨床治療実技です!
お互いに問診を取り合い、現在どのような体の状態かを予測します。
問診要点はすでに解説していますが、実際の情報の引き出し方などを講師からアドバイス。
腹部への手の持って行き方、触れ方など、かなり上達しておられます!
入会して間もない先生も、体当たりで取り組んでおられました!
筆者金澤は全体を見渡しながら流れを見ておりましたが、学生さん達も臨床に入る準備が整ったと感じられました。
そして、昨年12月の投稿で告知いたしました、稻垣先生の以下の提案。
↓↓
東洋医学的な鍼灸のゴールとは。
我々は、どれだけの認識を内包したら、東洋医学的な鍼灸を極めたと言えるのか。
そこを明らかにする。
立春を迎える、次回2月4日(日)の基礎講座で、参加者の皆様と一緒にディスカッション形式で導き出そうということになりました。
合言葉は、「みんなで鍼の達人になろう!!」です。
ご参加くださいましたみなさま、お疲れさまでした!
そして、毎回 設備の整った実技室を提供してくださいます大阪医療技術学園専門学校の、関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
次回『鍼道 一の会』東洋基礎医学講座は2018年2月4日、臨床医学講座は2月18日です。
「鍼道 一の会」東洋医学講座は、2018年4月より新年度講座を開始いたします。(募集サイトは現在準備中です)
東洋医学的な理論の上に立って、鍼治療を行いたいとお考えの方は、是非ご参加ください。
『鍼道 一の会』についてのお問い合わせは、事務局 大上(おおがみ)まで
詳細はこちらへ↓
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