【一三条】
太陽病、頭痛、發熱、汗出、惡風、桂枝湯主之。方二(用前第一方)。
太陽病、頭痛、發熱、汗出で、惡風するは、桂枝湯之を主る。方二(前の第一方を用う)。
この条文中には、12条とは違って悪寒がありません。おそらく、自汗がみられるものは、無汗に比べてあまり高い熱は出ないと予測されますね。
12条の場合、もし無汗であれば鍼をすると即座にじんわりとした発汗がみられるはずです。
13条では、鍼をすると悪風が治まり、自汗も治まってくるはずです。
このような場合、入浴はさらに発汗を促しますので禁忌です。
加えて、桂枝湯方にありますように、脾胃に負担をかけないように、飲食の指示もする必要があります。
【一四条】
太陽病、項背強几几、反汗出惡風者、桂枝加葛根湯主之。方三。
太陽病、項背(こうはい)強(こわ)ばること几几(しゅしゅ)とし、反って汗出で惡風する者は、桂枝加葛根湯之を主る。方三。
冒頭に太陽病とありますので、すでに頭や項がこわばっている状態ですね。
その上さらに、項や背中が厳しくこわばり痛んでいるのが、几几(しゅしゅ)=水鳥が首を伸ばしてまさにこれから飛び立とうとしている様子に似ていると形容されています。
重複しますがこれは、第1条の<頭項強痛>より厳しい状態です。
おそらく、肩首も厳しく凝っているのでしょう。
通常このような場合、正邪の抗争が拮抗して無汗である場合が多いのだと思います。
なぜならば条文中の<反汗出惡風者>に、わざわざ「反って」と表現しているからです。
通常なら無汗なのに、反って自汗して悪風していますよ、ということです。
後から出てきます、31条(P60)葛根湯と鑑別すると明確になります。
【31条】
<太陽病、項背強ばること几几として、汗無く悪風するは、葛根湯、これを主る>
桂枝加葛根湯と葛根湯の鑑別は、方中の麻黄の有無を見れば虚実という点であることが分かります。
以下の桂枝加葛根湯方の最後に記載されている、林億(11世紀)の解説を読んで頂けると、理解できると思います。
葛根に関しましては、後ほど解説いたします。
〔桂枝加葛根湯方〕
葛根(四兩)麻黄(三兩去節)芍藥(二兩)生薑(三兩切)甘草(二兩炙)大棗(十二枚擘)桂枝(二兩去皮)
右七味、以水一斗、先煮麻黄、葛根、減二升、去上沫、内諸藥、煮取三升、去滓、温服一升。覆取微似汗、不須啜粥、餘如桂枝法將息及禁忌。(臣億等謹按仲景本論、太陽中風自汗用桂枝、傷寒無汗用麻黄、今證云汗出惡風、而方中麻黄、恐非本意也。第三巻有葛根湯證云、無汗惡風、正與此方向、是合用麻黄也。此云桂枝加葛根湯、恐是桂枝中但加葛根耳。)
葛根(四兩)麻黄(三兩、節を去る)芍藥(二兩)生薑(しょうきょう)(三兩、切る)甘草(二兩、炙(あぶ)る)大棗(たいそう)(十二枚、擘(つんざ)く)桂枝(二兩、皮を去る)
右七味、水一斗を以て、先ず麻黄、葛根を煮て、二升を減じ、上沫(じょうまつ)を去り、諸藥を内(い)れ、煮て三升を取り、滓(かす)を去り、一升を温服す。覆(ふく)して微(すこ)しく汗に似たるを取り、須(すべから)く粥を啜(すす)らず、餘は桂枝の法の將息(しょうそく)及び禁忌の如くす。
(臣億等謹んで仲景本論を按ずるに、太陽中風の自汗は桂枝を用い、傷寒の無汗は麻黄を用う。今の證は汗出で惡風すと云う。而して方中の麻黄、恐らく本意に非ざるなり。第三巻に葛根湯證は、無汗にして惡風すと云う有り、正に此の方と向かい、是れ麻黄を合して用うなり。此れ桂枝加葛根湯と云うは、恐らく是れ桂枝中に但だ葛根を加うるのみ。)
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