今回は、太陽中風証と傷寒証の体表観察の要点です。
鑑別要点は、有汗・無汗でした。
さて、太陽中風証の場合、脈診をする際に寸口(大淵穴)が湿っていると肺兪を中心とした背部も発汗しています。
大淵穴と肺兪穴付近は、絶対的ではないものの、高確率で相関があります。
背部の発汗は、触れて明らかに発汗している・湿っている状態から、さっとなでると他の部位に比べて滑りが悪い、およそ自汗とは言い難いものまで、バリエーションがあります。
術者の手の感覚の繊細さが必要です。
それに比べて、太陽傷寒の場合は、はっきりしています。
肩背部のどこかに、毛が逆立っていて、なでるとザラザラとした感じがし、しかも明らかに部分的に冷えているところがあります。
術者の手は、こんな時こそ温かくなくてはなりません。
では顔面の気色診と腹診と舌診所見はは一体どうなっていると想像できますでしょうか?
腹診と舌診所見は、基本的には初期では、原則としてあまり顕著な変化は現れません。
なぜかと申しますと、腹診も舌診も主に裏を伺うものだからです。
ただし、表証が直接裏に顕著に影響している場合や、元々宿食・食積など、素体としてあらかじめ病毒が存在している場合などは、その限りではありません。
ややこしいでしょう、患者さんの普段の状態を知り得ていないとなかなか難しいのですが、そこは発症前の状態を問診で捉えるようにします。
が、顔面の気色には、顕著に現れる場合が多いです。
現れ方は、太陽病になる前の患者の正邪の状態によって様々です。
が、やはりすでに発熱している場合の多くは赤が現れますし、上焦に元々持っている陰邪が存在していると、発熱しているにも関わらず肺の部位(眉間)が白く色が抜けている場合もあります。
それぞれいろんなケースがありますので、その場その場で、他の所見と併せて理に随って理解するようにして頂けたらと思います。
そのような目で見続けていると、段々とつかみどころが分かってきます。
腹診においては、太陽傷寒の場合、心下の浅い部位にうっすらとした緊張が現れます。
会員のみなさまは、夢分流腹診術ですでに学びましたよね。
頭、項、胸は凡そ心下と相関することを。
そして第1条を再度思い出してください。
腹診は気を付けて診ないとなかなか分かりにくいのですが、治療を施して発汗が始まると表面の浅い緊張が即座に緩み始めます。
現代では、広義の傷寒の症候は、いわゆる風邪症候群として自ら体験したり、時に臨床で遭遇いたします。
肩こり、寝違えを訴えて来院しても、まま表証が関係していることが多々あります。
たいていは、風寒と湿邪が、内因とのからみで起きている場合が多いです。
ですのでもう少し、太陽中風証と傷寒にこだわって解説したいと思います。
【一条】
太陽之為病、脉浮、頭項強痛而惡寒。
太陽の病為(た)るや、脉浮、頭項強痛して惡寒す。
【二条】
太陽病、發熱、汗出、惡風、脉緩者、名為中風。
太陽病、發熱(ほつねつ)、汗出で、惡風し、脉緩(かん)なる者は、名づけて中風と為(な)す。
【三条】
太陽病、或已發熱、或未發熱、必惡寒、體痛、嘔逆、脉陰陽倶緊者、名為傷寒。
太陽病、或いは已(すで)に發熱し、或いは未(いまだ)發熱せずとも、必ず惡寒し、體痛(たいつう)、嘔逆(おうぎゃく)、脉陰陽倶(とも)に緊なる者は、名づけて傷寒と為す。
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