【一条】
太陽之為病、脉浮、頭項強痛而惡寒。
太陽の病為(た)るや、脉浮、頭項強痛して惡寒す。
【二条】
太陽病、發熱、汗出、惡風、脉緩者、名為中風。
太陽病、發熱(ほつねつ)、汗出で、惡風し、脉緩(かん)なる者は、名づけて中風と為(な)す。
【三条】
太陽病、或已發熱、或未發熱、必惡寒、體痛、嘔逆、脉陰陽倶緊者、名為傷寒。
太陽病、或いは已(すで)に發熱し、或いは未(いまだ)發熱せずとも、必ず惡寒し、體痛(たいつう)、嘔逆(おうぎゃく)、脉陰陽倶(とも)に緊なる者は、名づけて傷寒と為す。
2条と3条の共通点は、1条でした。
1条には、脈浮とありますので、2条も3条も当然脈浮なのですが、2条は加えて緩脉ですから、脈浮緩ですね。比較的手当たりの柔らかい脉です。
一方、3条は緊脈ですので脉浮緊。手当たりは緊張して堅く感じるような脉です。
さて、2条中風証の脉浮緩の体表と3条傷寒証の脉浮緊の体表所見の違いは何だと思われるでしょうか。
条文を比較してみると、2条中風証は「汗出で」です。
3条傷寒証は汗に関する記載がありません。
そこで少し考えてみましょう。
脈浮は正邪が肌表に結集していることを示していましたね。
その正邪抗争の様子が緩脈なのです。
したがって、肌表は開いて自汗していることが分かります。
ちなみに夏季、暑気盛んで自汗しているときも、脈浮緩となります。
いろんなケースを想像してくださいね。
温食後、発汗する場合も、少し滑が入りますが、脈浮緩となりますのでね。
そして3条傷寒証は、同じく脈浮で緊脈の肌表の様子を想像してください。
邪気は侵入しようとし、正気はそれを防戦して互いにせめぎあっていることが分かると思います。
ですので、3条傷寒証の場合は、「無汗」ということになります。
この考え方は、内傷病にも用いることが出来ます。
裏の邪気が出ようとしているのに、肌表で閉じ込める力が働くと似たような脈を呈します。
いわゆる気滞ですね。
他にも、脈浮緊となる場合を想像してみてください。
例えば温所から寒所に移動した場合などに現れる鼻水やくしゃみの時などにも脈浮緊が現れます。
反対に寒所から温所に移動したときに鼻水やくしゃみが出る場合、脈浮緊が現れる人と脈浮緩が現れる人がいます。
さて、この違いはなんだと思われますでしょうか。
いわゆる花粉症などの病理を解くのに、とても有意な観察眼です。
一度じっくりと考えてみてください。
ヒントは、素体の違いです。
「傷寒論」は、このように「尋ねながら」読んで応用していきます。
まとめます。
太陽中風証は自汗。
太陽傷寒証は無汗。
この有汗・無汗は、原則として鑑別要点になりますので、しっかりと記憶しておいてください。
ということは、イレギュラー、例外も数多くあります。
臨床では、このイレギュラーの方が多いかもしれません。
太陽中風証の自汗自体も、様々なバリエーションがあります。
この先、条文を読み進めていくと自汗とは言えないような太陽中風証も出てきます。
これが実際の臨床というものですね。
原則通りには行かないのですが、原則を以て測ります。
それだけに、しっかりと正証とその病理を把握しておくことが大事となってきます。
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