いよいよ夏本番ですね。
7月中は朝晩、秋のような爽やかさを感じていましたが、臨床講座を行いました24日当日は、急にムッとするような湿気を感じる気候となりました。
湿気は陰邪であり、陽気を阻みがちになるので、睡魔が現れやすくなります。
が、今回の講座では、どうやら受講生の皆さんの熱気に睡魔は退散してしまったようで、参加者の方からの積極的な質問がたくさん出されました。
先ずは「易学と東洋医学」。 今回は、河図洛書。
今回の講座で出された質問の大半を占めたのはこの易学。いやはや難解の極みです!
さすがの永松先生も、理解できている部分とそうでない部分を明確にして開示されました。
河図・先天易 |
洛書・後天易 |
ポイントは、河図は先天易で混沌(無形)から有形への収束・凝固の法則性を説き、洛書は後天易で、一度出来上がった有形が気の変化とリンクして拡散する法則性を説いたものだということでしょうか。。
金澤先生も、これまで何度も挑戦したが、なかなか臨床で使えるまでの深い理解には至っていないと仰います。
しかし、講師の先生方が、鍼灸医学の道に入ってかなりの年月を経てもなお、学びの姿勢を持ち続けておられるのは本当に素晴らしいです。我々も、日々研鑽あるのみです!
二時間目は、稲垣先生による『生薬から学ぶ人体と病』。今回は<瘀血とその治療薬について>
一般成書の中医学では、血流障害がすなわち瘀血であると読み取れるような記載が多くみられます。例えば舌裏・舌下静脈の怒張=瘀血などがそれに当たります。
それに対して「一の会」では、実体のある具体的な病邪を瘀血として認識する。
従って、瘀血が駆邪されたのであれば当然、具体的に大小便や生理出血で排泄されるはずである。
仮に、舌下静脈の怒張を瘀血だと認識し、刺鍼後それが消失したとすると、具体的に瘀血が排泄された後でないと理に合わない。
故に、”刺鍼後直ちに消失する舌下静脈の怒張”は、あくまで気滞レベルのものであり、病理産物としての瘀血ではないと説かれました。
さらに傷寒論においては、「瘀血とは水蛭(すいてつ)・蝱蟲(ぼうちゅう)・䗪蟲(しゃちゅう)を使うべき証のみを指す」と。
確かにこれらの生薬を用いるべき腹証は、癓瘕(ちょうか=痞塊)の存在を明確に記載されています。
また中薬学で”活血化瘀薬”とされているものの多くは、駆瘀血薬というより理気薬であると、川窮・桃仁などを例に挙げて解説してくださいました。
従って、本体の瘀血を下すには、理気薬を配すればよりシャープに駆邪出来る訳ですから、これを針灸術に応用しない手はない・・・と、深く納得した次第です。
そして午後からは、金澤先生による『時事講義』。今回は腹診。
例年、切診の中でも腹診は最も細やかさを要求され、難度が高いことから、実技としては最後に行われていました。
が、2016年度は金澤先生の診察順序に従い、顔面気色診、舌診、脈診、腹診・・・と進めております。
毎回話される事は、術者の「気の重心の位置」と「力を抜く」こと。また、ごりごりと深く探らずに浅いところに触れて深部を知るコツを説かれました。
そして、募穴の意味とは。
何故、心包募穴・膻中が膈上―上焦に在り、心募穴・巨闕が膈下―中焦に在り、肝募穴・期門が膈上―上焦に在るのか?
その意味を究明することの重要性を説かれました。
単に募穴の位置を覚えるだけでは、ものの役には立たない、具体的に人体の気血の動きを意識して捉えることが大切である。
そして東洋医学独自の概念である『部分と全体』との相関性は、いつ何時も外してはならない。
初学の方には難度が高く、最初はいちいち意識しなくてはならないが、それを何度も繰り返すうちに無意識レベルで行えるようになる。そこに至るまでの修練が必要なのだと。
続く臨床実技では、顔面気色診の時点で多くの症状を言い当て、舌診・脈診・腹診・・・と進むと、精神状態まで言い当てるなど、まるで占い師のようでした。
金澤先生の目下の目標は、不問診法なのだそうです。
そして最後は、永松先生による「一の道術」。
易学講義の時と打って変わって、一番生き生きされていたのが印象的でした。
が、中には汗を拭き拭き、道術に取り組んでおられる受講生の姿も。
日常的に筋トレを行い、筋骨隆々、立派な体格の受講生の方は、汗びっしょり。
一方、対峙する永松先生は、何とも涼しいお顔で、その方を操っておられる。。。
先生曰く、男性は筋力に頼ることが多いため、反って女性の方が上達が早いのだと。
身体の気の重心と軸をしっかりと保持するためには、筋力は重要でない。それは女性の先生方を見ると明らかです。
また、“力”を抜き、”気”を以て相手に触れると、たくさんの情報が伝わってきます。
これこそが、疲れずにしかも効率の良い切診力、刺鍼力につながるのです。
(「養生講座」は 8/6(土)に行います。)
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