ひそやかに・・・ いよいよ寒気到来 |
⑤転化・逆転
陰陽の消長・盛衰のところで述べたように、陰陽は、互いに一対となりながら反比例的に盛衰を繰り返す。
転化には、方向性と性質・状態の変化の二つがある。またその転化を起こすポイントは極まるということである。
その条件として、量的に蓄積されること、時間的・位置的に極点に達するというという二点がある。
図 9は、四季の陰陽消長とその転化を現したもので、転化のポイントをイメージしながら、以下の例をイメージしてもらいたい。
図 9 |
例:位置的・時間的極点
午前0時(正子=しょうし)からは、陽長陰消となり始め午後12時(正午=しょうご)からは一転して陽消陰長と陰陽の流れが逆転する。 図 9
ボールを上に投げると、放物線を描きながら極点で転化し、落下する。
水蒸気は、空に昇って雲となり、雨となって地上に降りてくる。
例:量的蓄積と性質・状態転化
また性質・状態の変化は、物質=形(可視)から非物質=気(不可視)への変化にみることができる。
水(可視)という液体に、熱=気(量)を加えることで水蒸気(不可視)へと気体に質的変化を起こす。 液体(可視)+熱気=気体(不可視)
また水蒸気は寒=気を加える(量)ことで液体になり、さらに寒を加えると個体へと性質を変化させる。
気体(不可視)
+寒気=液体(可視) → 液体+寒気=固体熱量を加えると沸点で極まり、一気に水蒸気となって上昇し、今度は徐々に冷えて液体となって下降し、摂氏0度で固体化する。
このように、量的に蓄積されたり、時間的・位置的に極点に達すると質的変化を来す。
例:人体ー位置的・時間的
経絡の流れは手足の指先(位置)で極まり、陰経と陽経の流れの方向が逆転する。
百会穴は陽の極点であり、会陰穴は陰の極点である。
下焦・腎の蒸騰作用で気化された津液は、上焦・肺に昇って粛降される。
表証が時間的経過と正気の虚により裏証に転化する。
裏証が時間的経過と正気の回復により、表証に転化する。
例:絶対的ではないが、よく見られる寒熱・虚実の臨床像として
経穴に現れる緊張した実は、時間的経過に従い、弛緩して虚に転化する。
腹診において、邪実で緊張した腹壁が極まると、邪実が沈んで弛緩し虚を呈する。
正気虚が回復の過程で、邪気と競合して実に転化する。
実痢が程度を超えると、虚痢に転化する。
脈診において、邪実が極まると転化し、脉が沈んで虚を呈する。
脈診において、正気虚が極まると転化し、浮数などの陽脉を呈する。
顔面の気色診で、陽虚が極まると熱証の赤色を呈することがある。(亡陽・真寒仮熱)
顔面の気色診で、気滞実が極まると、白青の寒証を呈することがある。(陽気内鬱・真熱仮寒)
その他、湿―水―痰や気―血―精などの正邪の生理変化を、また気滞―化熱―化火や気滞―瘀血、陰虚―陽亢―化火―生風などの病理変化を認識するためにも用いることができる。
<素問・陰陽応象大論>
「寒極生熱.熱極生寒.寒氣生濁.熱氣生清.」
(寒極まれば熱を生じ、熱極まれば寒を生ず。寒気は濁を生じ、熱気は清を生ず。)
上文は、手を氷水に入れて極度に冷やした後に、手が熱をもって火照るようになり、また運動などにより身体が極度に発熱発汗した後、冷えるようになるなどの生理変化を連想することができる。
また寒気が加わると運動は低下し、沈殿物・固形物などの物質(濁気)を生じ、熱すると気体化(清気)するなどの状態変化を説明したものである。
これに季節的要因を加えると、冬の寒冷下で酒・油ものを過食すると陽気が内鬱し、春になって咳・発疹などの熱証が現れやすくなる。
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