冬寒さに負けないひたむきな山茶花(サザンカ) |
2.軸(点・中心)と定位
図3-太極 陰陽両儀 |
陰陽論は、単純なモデルでありながら難解とされているのは、
軸をどこに立て、陰陽を論じているかという点である。
ここをしっかりと理解すれば、かなり有意に陰陽論を使うことができる。
事象・事物に対して単純に陽である、陰であると論議をしても意味をなさない。
どの対象に、どのような視点で、何を軸(中心)と定めて太極陰陽を論じているのかを、言外に理解する必要があるからである。
ひとりの人間を認識する場合、相手と自分の軸をどこに・いくつ定めるのかが重要である。
多面的に観るとは、同じ対象に、 図3- 太極 陰陽両義 を複数立てることである。
例をいくつか挙げると:
例1
相手を男・女として軸を立てた場合、夫・妻として軸を立てた場合、恋愛対象と結婚対象として軸を立てた場合、経済力・生活力として複数の軸を立てた場合など、それぞれ認識の結果の評価が異なる。
相手との関係性の必要度に応じて軸を複数立て(多面的)、最後に一点に集約して選択・行動を決するなどは、意識的・無意識的にほとんどの人が行っていることである。
軸を定めずにそれぞれが勝手に相手に対する評価を論じることは、無益なことであることは周知のとおりである。
東洋医学では、多面的な軸を初学時には意識的に用い、熟練に従い無意識領域にまで止揚し、自由闊達に用いるのである。
例2
男女の性器の形から分けるのであれば、男性器は凸なので陽、女性器は凹なので陰である。
男=陽 女=陰。
ところが軸(中心)を生理的視点に置くと、女性は生理出血があるので相対的に気有余血不足で陽であるため、上焦の乳房が膨らむ。
反対に男性は気不足血有余で陰であるため、髭を生じ下焦の陰器が膨らむ。
男=陰 女=陽。 上焦=陽 下焦=陰
従って、一般的に男性は気虚下痢を起こしやすく、女性は血虚便秘を起こしやすいと大雑把に認識することができる。
例3
聖人南面して立てば、身体の左は東で陽気が長じるので陽、右は西で陽気が消じるので陰である。
左=陽 右=陰 東=陽 西=陰
ところが左右の腕の機能に軸(中心)を置くと、右利きの人は右がよく動くので陽、左手は相対的に陰である。
左=陰 右=陽
このように、立てる軸が異なると、陰陽は逆になる。太極を立てる場合には、軸(中心)の定位を明確にする必要がある。
特に古典を読解するには、陽気・陰気が寒と熱、臓と腑、天気と地気、遠心性と求心性等々、軸の定位がどこにあるのかを見極めて読解することが非常に重要になってくる。
さらにこれを臨床で用いるなら、正気を軸にすると神・気は陽、精・血は陰となり、邪気を軸にすると陽邪と陰邪にそれぞれ分けることができる。
表裏、寒熱、虚実の六変、臓腑経絡、内外・上下・左右の空間的陰陽など、必要に応じて様々に軸を立て、術者は無極となって補瀉を施すのが肝要となる。
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