ブログ「鍼道 一の会」

経絡は本当に存在するのか? 第2回 一の会基礎医学講座(午前の部)

東洋医学講座

この記事について

 6月8日に開催しました手太陰肺経を対象とした、酒井つぐみ先生による経絡学の午前講義内容です。
 午後は、金澤による問診から治療までのデモンストレーションを行いましたので、次回の投稿で一部公開いたします。

 鍼灸師にとって、経絡の存在を疑うことは、治療の根幹に関わる大問題です。その根幹に関わる経絡の存在を確かめてみようと提案したのが、酒井つぐみ先生です。
 私は、この提案を非常に大胆かつ重要なものと感じ、酒井先生の提案した実験を皆で行い、検証しました。

 まず最初、酒井先生の講義では、今回は手太陰肺経の経絡・経筋・経別・絡脈の流れを、原文を読みながらそれぞれの気血の流れを図に書き込みながら学びました。


 経筋は一般的に筋肉と認識されていますが、「一の会」では「筋」を「すじ」、つまり通り道と理解しています(大阪・御堂筋のイメージ)。
 また、経筋は四肢末端から体幹部へと流れ、正経・陰経脈の流れとは逆になります。さらに、経筋と経別の流れを合わせると、ほぼ正経の流れに一致します。

 これらのことから、経脈成立の歴史的認識の順序を考えてみると、経筋の発見が最も古く、次第に体幹部の臓腑との関係が発見された(経別)のではないかと考えられます。
 そして、易学の終始・循環の思想に基づき、現在の経絡が「環の端無きが如し」とまとめられたのではないでしょうか。易学の思想が加わることで、実際の経絡の流れよりも思弁的な認識が強まった可能性があります。

 手太陰肺経・正経流注の「起于中焦、下絡大腸、還循胃口、上膈屬肺」という流れは、流れの方向性よりも関係性を述べていると考えられます。
 これを拡大解釈し、経筋の流れを合わせて考えると、経絡に流れの方向性があるのかという疑問が生じます。この問題に対し、経絡の流れを意識した補瀉迎随という手法を用いて実験を行ったところ、術者の意念の作用が結果に大きく影響することがわかりました。
 後に記していますが、経脈の流れに逆らって刺したにもかかわらず、補法として結果が出ています。
 この点については、読者諸氏が各自で判断されると思いますが、「一の会」では常識や一般通念も実際に検証する姿勢を大切にしています。

 酒井先生の講義の後、稲垣先生にモデルになっていただき、経絡の存在を確認する実験を行いました。
 まず、参加者全員であらかじめ脈診、腹診、背候診、原穴診を行い、左太淵と左肺兪に発汗を確認した上で、左太淵に1番鍼を横刺し、補法を施しました。(経脈の流れと逆方向に刺しました。)


 その後、中脘、下脘、上脘、募穴である中府の変化を全員で確認したところ、顕著な変化が認められました。太淵への補法は本来、肺の収斂作用が強化されるので止汗効果があるのですが、右肺兪・肩背部の発汗が見られました。
 この状況をどのように理解するのか。
 補法を行ったことで、生体の自力瀉法が起きたと考えます。なぜなら、脈診・腹部所見・他の背部兪穴の状態が大変良くなってきたからです。
 

 募穴 中府の認識について、一部動画を開示いたします。

 腹部は多くの経絡が複雑に流注しているため、今回の実験だけで経絡の存在を完全に検証できたとは言い難いですが、経絡の存在を意識する姿勢は今後の臨床に大いに役立つと考えています。

 「一の会」は、全員参加型のアットホームで和やかな会です。酒井つぐみ先生が当ブログ内で会の雰囲気を詳しく伝えており、ぜひご一読ください。
【一の会の講義にて】

 画像は、原穴へのアプローチ(触れ方)を、直接各人に伝えているところです。

 「一の会」にご興味をお持ちの方は、ぜひ、遊び感覚でお越しください。
 第2回の臨床医学講座は6月22日に開催予定です。詳細は下記をご覧ください。
2025年度 東洋医学講座 募集要項

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