春・・・梅の花 |
1.春‐生 【春・・・生まれる気】
春の季節、すなわち立春から立夏までの3カ月を古来、発陳(はっちん)と言います。
自然界のあらゆるものが表面に出てきて、ゆっくりと動き始めるという意味です。
春は冬の寒気が次第に緩み始め、冬の間に潜んでいた万物が、息を吹き返したかのようによみがえり、天地の間に発生と躍動の気が徐々に満ち、自然と悦びを感じる時期です。
この時期はゆったりと過ごすのがポイントで、心も万事のびのびとさせ、肉体的にも急激な労働は避けます。
古典には、イメージしやすいように以下のように記されています。
<この時期は、日の出と日没に応じて、人間もまた早寝早起きをし、ゆったりと歩幅を広くして庭を歩き、髪の毛はゆるく解きほぐし、服装もゆったりとさせる。
精神的には、今年はこれをやろう・あれもやりたいなどと、少しずつやる気を起こし、心持は何事も生じさせよう・伸ばそうとイメージする。
人に対しても、褒めたり励ましたりすることは良いが、虐げたり罰したりすることのないように心掛けるのが良い。>
春の気というものは、「生まれる」「始まる」という気が自然界に蔓延していますから、人間も同じように、「伸ばそう」「育てよう」とする春の気に応じた起き臥し・身なりや服装・動作・心持でいることが、春の気に順応することになります。
この時期に一斉に咲き始める美しい花々を眺めながら、ゆったりとこれからの明るい未来をイメージするのには、ふさわしい季節です。
一日の内では、朝に相当しますので、朝から気合を入れて過度に緊張したり、イライラ・慌ただしくならないように、万事心得て過ごしたいものです。
【身体に現れる変化】
身体の変化としては、冬の間の過ごし方が、春になって表面化します。春・朝の状態には当然、冬・夜の睡眠状態が顕著に現れます。
春の季節は、内から外へ、下から上へと気が流れますので、特に病的でなくとも、のぼせや肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、などの症状も現れやすくなります。 図1-1
図1-1 |
反対に下半身は気が不足するので冷えやすくなり、足元が不安定になりやすく、けつまずいたり転んだりしやすくなります。
脈診においても、雛が殻を破って出てくるように、身体内部の陽気が体表に向かいます。
従って脉の深さもまた次第に浮いてくるようになり、しかも手当たりが堅く感じられる「弦脉」を呈します。
また冬季の生活の誤りが、この春の時期になって表面化します。
冬に知らず知らずにため込んだ体内の邪気が、深部から浅部に気が張り出し邪気もまた表面に、しかも上半身に集まるようになります。
春の喘息や花粉症、アトピーなどは、冬の間に体内に過剰に蓄えていた体液や熱が下から上へと激しく気が突き上げ、頭顔面部・上半身に溢れ出てきたものです。
現代医学では、アレルギーという診方をしますが、東洋医学では、身体が春気の動きの変化に伴って、邪気も移動し、排泄しようとしている姿と捉えます。
これら春に特有の症状は、イライラや焦りなど、心の状態によって悪化します。イライラや焦る気持ち、怒気などの感情は、気が特に昇りやすいからです。
またこの時期は、気が伸びず鬱などの気分障害も現れやすいので、ゆったりと散歩をしたり体操やヨガなどで心身を伸びやかにするのが、この時期にふさわしい養生法です。
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