2段目は、天・人・地の三才、地位に相関させてみました。腎の臓は、人体にあっては下焦に位置するというのがその理由です。
三才思想については、下記をご参考になさってください。
以下は、2段目の原文と読み下し文です。意訳は、以下にリンクを貼っていますので、ご参考になさってください。
解説
この2段目は、臨床的に非常に意義深い内容を含んでいると筆者は文面から受け取っております。
原文に目を通して頂くとお分かりのように、腎の陰陽の消長に伴い、女子7,男子8の倍数で肉体の成長と老衰、生と死が説かれています。
以下に、図示してみました。
上図をご覧いただくとお分かりのように、女子三七 21歳、丈夫三八 24歳で腎の陰陽が平均して肉体の成長が止まります。
幼少期から肉体の成長の極期に至るまでは、陰陽の平衡法則により、陽気が先行しながら陰気(肉体)が大きくなっていきます。
このことから、幼少期は陽気過多のため、子供はじっとしていません。
また病気になると、その進行も治癒も速いという特徴があります。
幼児が、夜間に発熱しやすいのも、夜になると衛気が陽気過多の体内に入るためと理解されます。
逆に、老年期になると陽気が衰えてくるので、まずは代謝が落ちます。その代謝の低下に応じて陰気である肉体も次第に壊れてくることになります。
また病気になると、幼児に比べてその進行も治癒も緩慢になる傾向になります。
老人の夜間尿も、夜になると衛気が陽気不足の体内に入り、一時的に代謝が促進されて生じると考えることができます。
これらのことから、それぞれの時期の養生法として、幼少期は陽気が鬱しないように万事伸び伸びとさせてあげるのがよろしいですね。
そして老年期に入ると、働きすぎて陽気を損ねないように気をつけること。
また過度に心配したり気苦労などで気滞を起こさいようにし、適度に身体を動かして陽気を巡らせることが大切なことになって参ります。
次に大事なことは、文中に「腎なる者は水を主り、五藏六府の精を受けてこれを藏す。」と記されていることです。
五臓六腑が健全であることが、腎の精気を保つためには重要であることが説かれています。
そのようであれば、1段目に説かれている飲食・生活習慣の養生も大切ですし、恬惔虚無であることも大事となって参ります。
これらのことは、年齢に応じた養生のアドバイスの要点になります。
また幼児や老齢期の方の治療の際には、治療者が心得ておくと治療経過を落ち着いて診ることができます。
次回は、第三段目、人位のところを読み進めて参ります。
上古天真論 2段目 原文と読み下し文
帝曰.人年老而無子者.材力盡邪.將天數然也.
帝曰く。人年老いて子無き者は、材力の盡(つ)きたるや、はた天數の然(しから)しむるや。
岐伯曰.女子七歳.腎氣盛.齒更髮長
岐伯曰く、女子七歳、腎氣盛ん、齒更わり髮長し。
二七而天癸至.任脉通.太衝脉盛.月事以時下.故有子.
二七にして天癸至り、任脉通じ、太衝の脉盛ん、月事は時を以って下り、故に子有り。
三七腎氣平均.故眞牙生而長極.
三七は腎氣平均す。故に眞牙生じて長極まる。
四七筋骨堅.髮長極.身體盛壯.
四七は筋骨堅く、髮の長(た)け極まり身體は盛壯たり。
五七陽明脉衰.面始焦.髮始墮.
五七は陽明の脉衰え、面焦げ始め、髮墮ち始める。
六七三陽脉衰於上.面皆焦.髮始白.
六七は三陽の脉、上に衰え、面皆焦げ、髮白くなり始める。
七七任脉虚.太衝脉衰少.天癸竭.地道不通.故形壞而無子也.
七七は任脉虚し、太衝脉は衰少し、天癸は竭き、地道は通ぜず。故に形壞れて子無きなり。
丈夫八歳.腎氣實.髮長齒更.
丈夫八歳にして腎氣實し、髮長く齒更(か)わる。
二八腎氣盛.天癸至.精氣溢寫.陰陽和.故能有子.
二八は腎氣盛んにして天癸(てんき)至り、精氣溢寫(いっしゃ)して陰陽和す。故に能く子有り。
三八腎氣平均.筋骨勁強.故眞牙生而長極.
三八は腎氣平均し、筋骨勁強たり。故に眞牙生じて長(た)け極まる。
四八筋骨隆盛.肌肉滿壯.
四八は筋骨隆盛、肌肉滿壯たり。
五八腎氣衰.髮墮齒槁.
五八は腎氣衰え、髮墮ち齒槁れる。
六八陽氣衰竭於上.面焦.髮鬢頒白.
六八は陽氣上に衰え竭(つ)き、面焦げ、髮鬢(はつびん)は頒白(はんぱく)す。
七八肝氣衰.筋不能動.天癸竭.精少.腎藏衰.形體皆極.
七八は肝氣衰え、筋動ずること能わず。天癸竭(つ)き、精少く、腎藏衰え、形體(けいたい)皆極る。
八八則齒髮去.腎者主水.受五藏六府之精而藏之.故五藏盛乃能寫.
八八は則ち齒髮去る。腎なる者は水を主り、五藏六府の精を受けてこれを藏す。故に五藏盛んなれば乃ち能く寫す。
今五藏皆衰.筋骨解墮.天癸盡矣.故髮鬢白.身體重.行歩不正.而無子耳.
今五藏皆衰え、筋骨解墮し、天癸は盡(つ)きるなり。故に髮鬢(はつびん)は白く、身體は重く、行歩は正しからず。しかして子無きのみ。
帝曰.有其年已老而有子者.何也.
帝曰く、其の年已(すで)に老いて子有る者有るは、何なるや。
岐伯曰.此其天壽過度.氣脉常通.而腎氣有餘也.
岐伯曰く。此れ其の天壽過度にして、氣脉は常に通じ、しかして腎氣有餘すればなり。
此雖有子.男不過盡八八.女不過盡七七.而天地之精氣皆竭矣.
此れ子有りと雖ども、男は盡(ことごと)く八八を過ぎず、女は盡(ことごと)く七七を過ず。しかして天地の精氣、皆竭(つき)るなり。
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