一源三岐説は王叔和(おうしゅくか・3世紀)によって立てられた説であるが、臨床学の基礎概念として重要であるため、順を追ってまとめてみたい。
一源三岐の一源とは、腎の陰陽の気のことであり、三岐とは任・督・衝脉を指している。
つまり腎の臓から十二経絡の基となる三本の経絡が出ているということである。
このことは生命力の基礎は腎気であり、<素問・上古天真論>に記載されているように、腎気の盛衰が人の成長と老化と深く関係していることを示している。
任脈
任脈の流注は、3文献に記載されているが、以下のように微妙に異なっている。
1.素問 骨空論
任脉者.起於中極之下.以上毛際.循腹裏.上關元.至咽喉.上頤.循面入目.
任脉なる者は、中極の下に起り、以って毛際を上り、腹裏を循り、關元を上り、咽喉に至り、頤(い)を上り、面を循りて目に入る。
2.霊枢 五音五味
衝脉任脉.皆起於胞中.上循背裏.爲經絡之海.其浮而外者.循腹(右)上行.會於咽喉.別而絡脣口.
衝脉任脉、皆胞中に起り、上りて背裏を循り、經絡の海と爲す。其の浮にして外なる者は、腹を循りて上行し、咽喉に會し、別れて脣口を絡う。
3.難経 二十八難
任脉者.起於中極之下.以上毛際.循腹裏.上關元.至咽喉.
任脉なる者は、中極の下に起り、以って毛際を上り、腹裏を循り、關元を上り、咽喉に至る。
共通しているのは、膀胱の募穴である中極穴の下(深部)から陰器付近を流注に納めながら、腹部正中を上行して顔面部に至る点である。
ここで重要に感じるのは、<霊枢・五音五味>に記載されているように、浮いて外なるものと表現しているように、任脈と衝脉が明確に区別されていない点である。この点については、後に触れる予定である。
ちなみに、胞中とは、子宮とされているが膀胱腑のことである。
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