
現代では、病院に行けば血液検査やCTやMRIなど、身体の内部を診ることができる多種多様な検査機器が揃っている。
・・・しかし、そうした機器がなかった時代、東洋医学の世界では、どうやって身体を診て、治療をしていたのか。
.
一の会では、昔から行っていたような東洋医学的な身体の捉え方、
パッと見た印象を観る「望診」、
患者さんの話し方・声の調子を聴く「聞診」、
直接症状や身の回りのことについて問うていく「問診」、
そして体表観察である「切診」を用いて、一人一人の「心体」を総合的に診ていく。
.
先日、鍼道一の会で、「体表観察(切診)」の実技があった。
落ち込んだとき、悲しいとき、不安なとき…誰かがそっと背中に手を置いてくれるとそれだけで安心した、そんな経験は多くの人があると思う。
鍼ももちろん使うけれど、「触れる」という行為そのものが、患者さんにとっては治療になることもある。
.
実際に、鍼をする前に背中やお腹の状態を診るために触れるだけで、硬かった部分が緩んでいく場面を臨床で何度も目の当たりにしてきた。
.

一の会でまず学ぶのは「触れ方」。
先生は「不快な思いをさせるような触り方では、患者さんの身体はほんまの顔は見せてくれんで。」
と、口酸っぱく伝える。
人間関係では、
誰しも、いやだなあ・・・と思う相手に、素の自分を見せることは抵抗があるが、
信頼する相手だったら自然と素の自分でいられる。
それと同じで身体も、ぎゅうぎゅう押して痛くしたり、不快な思いをさせたりしないように、患者さんが安心できる「触れ方」身につけていく。
.
.
いよいよ、実技の時間。
東洋医学の「切診」は、皮膚の緊張や熱感、気血の停滞等を「触れる」ことで感じ取り、その人の心体の状態を診ていく。
まずは、顔色や脈の状態を診て、身体の状態を想定する。
「この状態やったら、おそらく左のみぞおち部分が硬くて、左上の背中の部分が張ってるやろなぁ。」
と先生が見立てた後、みんなで触れてみる。
ドンピシャで、左のみぞおちの部分、背中に皮膚の緊張があり硬くなっていた。
.
さらに、上下・左右の状態を観察し、身体のバランスを立体的に診ていく。
脊柱を中心として左が硬くなっているなら、右はどうか。
上(肩)が緊張しているなら、下(腰)のはどうか。
そうやって患者さんの身体の全体を診て、この偏りを一本の鍼で整えるか、を考える。
.
背中の上部の特に熱感のある場所に一本鍼を入れて、数分後に変化の確認をする。
実際に、脈の打ち方や形がガラッと変わり、お腹や背中の張っていた部分は緩んでいた。
たった一本で身体が大きく動いたのが分かった。
.
「鍼をする前と鍼をした後の変化をしっかり見るんやで。たった一本でも身体はダイナミックに動くから。」
そして「自分がこれでいけるって思ったらそれでええ。」と先生は伝えた。
.
身体のバランスが整えば、今出ている症状がなんであれ、身体は勝手に変わっていく。
症状だけに囚われる必要がなくなる。
あとは患者さんの身体に委ねるだけ。
.
.
実際に患者さんを診ていても、一本の鍼で肩や腰、ひじの痛みがスパッと取れることもある。
息がしやすくなったり、一気に緩んで身体が重く感じられたり…
その場で症状が取れたり、時間をかけて整ってきたりすることも往々にしてある。
.
たった一本…それだけで、身体は変わる。
本来、身体ってかなり繊細なものなんだろうな、と思ったりする。
環境の変化やちょっとした出来事で、身体は揺れ動き、身体の不調が出たり、逆に良くなったりすることもあるのだろう。
だからこそ、その繊細さに向き合う鍼灸には、大きな可能性があると思った講義でした。




コメントを残す