【三一六条】
少陰病、二三日不已、至四五日、腹痛、小便不利、四肢沈重疼痛、自下利者、此為有水氣。其人或欬、或小便利、或下利、或嘔者、真武湯主之。方十五。
少陰病、二、三日して已(や)まず、四、五日に至り、腹痛、小便不利、四肢沈重(ちんじゅう)疼痛(とうつう)、自下利する者は、此れ水氣(すいき)有りと為(な)す。其の人或は欬(がい)し、或は小便利し、或は下利し、或は嘔する者は、真武湯之を主る。方十五。
この316条、真武湯証は、すでに解説していますのでここで改めて触れません。
【三一七条】
少陰病、下利清穀、裏寒外熱、手足厥逆、脉微欲絶、身反不惡寒、其人面色赤。或腹痛、或乾嘔、或咽痛、或利止脉不出者、通脉四逆湯主之。方十六。
少陰病、下利(げり)清穀(せいこく)、裏寒外熱し、手足厥逆、脉微にして絶せんと欲し、身反って惡寒せず、其の人面色赤し。或は腹痛し、或は乾嘔し、或は咽痛し、或は利止みて脉出でざる者は、通脉四逆湯之を主る。方十六。
この通脈四逆湯証、<類聚方広義>を見ると「四逆湯証にして吐利厥冷甚だしき者を治す」とあります。
四逆湯については以下ですでに触れていますので、ご覧頂ければと思います。
69.太陽病(中)91・92条 四逆湯(2)真寒水仮熱・裏水仮熱?
さて、通脈四逆湯と四逆湯の配剤を比べてみます。
四逆湯 甘草2両 附子1枚 乾姜1.5両
通脈四逆湯 甘草2両 附子1枚 乾姜3両
乾姜が倍加されていますので、「結滞水毒」の程度が大きいことが分かります。
吉益東洞は、四逆湯の君薬は炙甘草であると述べ、通脈四逆湯の炙甘草は3両にすべきだと言っています。
この辺りは、急迫症状の程度で加減するのが良いのでしょう。
また大塚敬節は、面色が赤いものには葱九茎を加えるというところから以下の加減法の文は、後人の追論でであり、臨床的にも無用であるとして一蹴しています。
筆者はもまた、そのように考えていますがどうでしょう。
〔通脉四逆湯方〕
甘草(二兩炙) 附子(大者一枚生用去皮破八片) 乾薑(三兩強人可四兩)
右三味、以水三升、煮取一升二合、去滓、分温再服、其脉即出者愈。面色赤者、加葱九莖。腹中痛者、去葱、加芍藥二兩。嘔者、加生薑二兩。咽痛者、去芍藥、加桔梗一兩。利止脉不出者、去桔梗、加人參二兩。病皆與方相應者、乃服之。
甘草(二兩、炙る) 附子(大なる者一枚、生を用い皮を去り、八片に破る) 乾薑(三兩、強人は四兩とすべし)
右三味、水三升を以て、煮て一升二合を取り、滓を去り、分かち温め再服す。其の脉即ち出づる者は愈ゆ。
面色赤き者は、葱九莖を加う。腹中痛む者は、葱を去り、芍藥二兩を加う。嘔する者は、生薑二兩を加う。咽痛する者は、芍藥を去り、桔梗一兩を加う。
利止みて脉出でざる者は、桔梗を去り、人參二兩を加う。病皆方(ほう)と相應(そうおう)する者は、乃(すなわ)ち之を服す。
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