さて、昏迷に昏迷を重ねながら5回シリーズでここまでやってきましたが、ここで一旦まとめまして、後は読者諸氏のコメントを期待したいと思います。
下記の条文、間違いであると思われるところを赤字にしています。
【一四一条】
病在陽、應以汗解之。反以冷水潠之。
若灌之、其熱被劫不得去、彌更益煩、肉上粟起。
①意欲飲水、反不渴者、服文蛤散。
若不差者、與五苓散。
寒實結胸、無熱證者、②與三物小陷胸湯(用前第六方)。
白散亦可服(一云與三物小白散)。七。
病陽に在れば、應(まさ)に汗を以て之を解すべし。
反って冷水を以て之を潠(ふ)く。
若し之を灌(そそ)げば、其の熱劫(おびや)かされて去るを得ず、彌(いよ)いよ更に益々(ますます)煩し、肉上粟起(にくじょうぞっき)す。
意(こころ)に水を飲まんと欲すれども、反って渴せざる者は、文蛤散(ぶんごうさん)を服す。
若し差(い)えざる者は、五苓散を與う。
寒實(かんじつ)結胸、熱證無き者は、三物小陷胸湯(さんもつしょうかんきょうとう)を與う(前の第六方を用う)。
白散(はくさん)も亦(ま)た服すべし(一に云う、三物小白散(さんもつしょうはくさん)を與うと)。七。
まず①に関しては、すでに述べました<金匱要略><類聚方広義><新古方薬嚢>に照らし合わせても、文蛤散・文蛤湯に共通して激しい口渇があります。
したがって、<金匱要略・嘔吐噦下利病> P341 19条
吐後渴飲得水而貪飲者、文蛤湯主之、兼主微風脈者頭痛。
上記条文の「吐後渴飲得水而貪飲者」を①の条文に加えて解釈する。
また<金匱要略>の「文蛤湯主之」は、<類聚方広義>に倣って「文蛤散主之」に改める。
そして「兼主微風脈者頭痛」の後に「文蛤湯主之」と書き加えるのが妥当だと思います。
おそらく「傷寒論」と「金匱要略」双方の間で、錯簡があったのでしょう。
②に関しては、<金匱要略・雑病方>の三物備急丸かと思ったのですが、証が記載されていません。
配剤は、大黄1両 乾姜1両 巴豆1両 と、巴豆剤であるのは白散と同じなので、類似した証候に用いたのかもしれませんが、不明な点です。
また、口渇シリーズの生薬として挙げることのできる、文蛤・石膏・猪苓・沢瀉との違いは、自信をもって明確にすることが出来ませんが、凡その見当を付けてみました。
石膏は白虎湯類に用いられていますので、煩や讝語・表熱を伴う口渇なので、中焦の熱、主に胃熱を清する。
猪苓・沢瀉は、五苓散・猪苓湯に用いられており、共に茯苓が配されていますので、下脘や臍下付近に悸であったり小結があり、小便不利も見られます。
共に小便利を得ると緩解する訳ですから、水が陽気を阻んで熱化した口渇であることが分かります。
また沢瀉の薬能のひとつに、冒眩がありますので、全身にあまねく存在している水を小便に導くのだろうと思われます。
猪苓・沢瀉共に、水を下に引く薬剤ですね。
なんとなく沢瀉、八卦の兌沢を瀉すというイメージが出てきますね。
文蛤に関しては、既に書いていますが、新古方薬嚢の文蛤散を服用した後、発汗がみられるとありましたので、熱を肌表に導く剤と見当がつきます。
口渇という一症状であっても、病理のバリエーションはたくさんありますね。
最後に、白散について。
<新古方薬嚢>では、桔梗白散という方剤名で証の解説がありましたので、これを記して141条を終えたいと思います。
桔梗白散の証
「咳多く胸苦しく胸中脹り熱少なき割に寒気劇しく咳する毎に痰あり、久しく癒えざる時は臭味のある痰を吐く者あり。胸中脹りつかえ息苦しきが本方の特徴なり。」
やはり、やはり、痰→膿という流れが、イメージされますね。
142条は、後人の攙入と思われますので、原文と読み下し文のみ掲載しています。
では今回は、これまで。
[一四二条]
太陽與少陽併病、頭項強痛、或眩冒、時如結胸、心下痞鞕者、當刺大椎第一間、肺愈、肝兪、慎不可發汗。發汗則讝語、脉弦、五日讝語不止、當刺期門。八。
太陽と少陽の併病(へいびょう)、頭項強痛、或は眩冒(げんぼう)し、時に結胸の如く、心下痞鞕する者は、當に大椎第一間、肺愈、肝兪を刺すべし。慎(つつし)んで汗を發す可からず。汗を發すれば則ち讝語(せんご)す。脉弦、五日にして讝語止まざれば、當に期門を刺すべし。八。
コメントを残す