ブログ「鍼道 一の会」

94.太陽病(下)131∼133条 大陥胸丸 方剤吟味

〔大陷胸丸方〕

大黄(半斤) 蔕子(半升熬) 芒消(半升) 杏仁(半升去皮尖熬黑)

右四味、擣篩二味、内杏仁、芒消、合研如脂、和散。取如彈丸一枚、別擣甘遂末一錢匕、白蜜二合、水二升、煮取一升、温頓服之、一宿乃下。如不下、更服、取下為效。

如藥法。

大黄(半斤) 蔕藶子(ていれきし)(半升、熬る) 芒消(半升) 杏仁(半升、皮尖を去り、熬りて黑くす)

右四味、二味を擣(つ)き篩(ふる)い、杏仁、芒消を内(い)れ、合わせて研(す)りて脂(あぶら)の如くし、散に和す。彈丸の如きもの一枚取り、別に甘遂(かんつい)末一錢匕(ひ)を擣(つ)き、白蜜二合、水二升もて、煮て一升を取り、温めて之を頓服す、一宿(いっしゅく)にして乃ち下る。

如(も)し下らざれば、更に服す、下(げ)を取るを效(こう)と為(な)す。禁ずること藥法の如くす。

 

 上記条文の最後、「禁ずること藥法の如くす。」の「禁」は、一般的には「謹んで」と解釈されています。

 大陥胸丸で新しく登場した薬剤は、葶藶子です。

葶藶子(ていれきし) 気味 辛苦寒
中薬学:瀉肺平喘 行水消腫
薬徴:水病を主冶するなり。傍ら肺癰・結胸を治す。
新古方薬嚢:味辛寒、辛は則ち肺に入り寒は則ち熱を除く故に肺気虚し熱を持ちたる場合に肺中又は胸中に滞りたる水を収め下すことを主る。故に喘息咳嗽呼吸困難を治す。

 おおよそ葶藶子は、水を動かす薬剤であることが分かります。

 気味苦温の杏仁も、薬徴では「胸間の停水を主冶する」とありますので、杏仁・葶藶子のペアで水を下に動かすことが分かります。

 そして気味鹹苦寒の芒硝が加えられていますので、腹証奇覧では、心下は按じて痛まないとされているものの、ある程度の緊張が存在しているか痛む場合もあると分かりますね。

 もう一度まとめますと、芒硝で塊を潤し軟らげ、葶藶子・杏仁で水を下に動かし、この水を気味苦寒の大黄が排便へと導くことが見えてきます。

 ですから、大陥胸丸を服用すると、小便利とはならず下痢することになります。

 以前、稻垣先生が大陥胸湯証を意識して、ご自身に尺沢穴を瀉したところ、快利を得て同じ結果が得られたと講義で話されていました。

 鍼を用いる場合、いろんな手があると思います。

 この後続く、132条・133条は、解釈できないことも無いと思われますが、やはり後人の覚書と思われますので、原文と読み下し文の記載だけにしています。

一三二】結胸證、其脉浮大者、不可下、下之則死。

結胸證、其の脉浮大の者は、下すべからず、之を下せば則ち死す。

 

一三三】結胸證悉具、煩躁者亦死。

結胸證悉(ことごと)く具(そなわ)り、煩躁する者も亦(ま)た死す。

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