鍼灸医学の懐

五行論は妄説?(3)

解説

 今回は、相剋関係を説明致します。


 相克関係は、簡単に述べると、下図のように相互に制約する関係です。


相剋関係.jpg

 木は土を尅し、土は水を尅し、水は火を尅し、火は金を尅す。


 これをイメージにつなげると、木は土から養分を取り上げ、土は水をせき止め、水は火を消し、火は金を熔かし、金は木を切る。


 と、まあこんな感じです。以前、講座の参加者から、何故『金は木を切る』といきなり道具が出てくるのは何故かと、鋭い質問があって、答えられなかったことがあります。


 おそらく、五行のバランス・均衡を考えるとそうならざるを得なかったのでしょう。


 千変万化する自然界、人間の状態を、この相生・相克関係の法則だけで説明しようとすること、そのものに無理があると僕は考えます。


 鍼灸医学の古典に、『難経(なんぎょう)』という素晴らしい著書があるのですが、この六十九難に、『虚する者は其の母を補い、実する者は其の子を瀉す』という記載があります。


 どういうことかと言うと(上図を参照してください)、たとえば『木』を中心に考えると木を育てる「水」が母となり、木から生じる「火」が子になるので、相生関係は、母子関係でもあるのです。


 そして『虚』というのは不足した状態。『実』と言うのは過剰になった状態を指します。


 そして六十九難に随って治療すると、『木』が不足すると母である「水」を補い、『木』が過剰であるなら『火』を弱くするようにしなさいと言ってる訳です。


 この記載を軸に治療をしておられる流派もありますが、僕は六十九難で何故このような法則を出してきたかの根拠がどうしても見出せず、今もその問題は解けていません。


 当然、治療に際して六十九難の説は取り入れていません。法則として、それに見合う結果が得られなかったからです。


 黄帝内経の中でも、五行の相生・相剋関係で説かれているところが幾多ありますが、無理があるところが目につく人は、僕だけじゃないと思います。


 ところが五行と五臓を全否定してしまうと東洋医学は成り立たなくなってしまう。


 そこで五行と五臓がどのような目的で、どのように結びついていったのかを想像してみたいと思います。


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