鍼灸医学の懐

經絡論篇第五十七.



 本篇は、前篇『皮部論篇』の続編であるように感じる。

 
 筆者の感覚では、例えば手足を診た時、経絡別に五色が現れているとは認識できない。
 
 しかし、顔面の気色だけでなく体幹部や四肢が現す色は、大変重要と感じている。
 
 本篇で取るべきところは、四時陰陽の盛衰によって様々に変化する色艶の、常と変を噛分けることの重要性であると筆者は考えている。


原 文 意 訳 
 
 黄帝が問うて申された。体表に現れる浅い絡脉の色は、青、黄、赤、白、黒とそれぞれ一様でないのは、いったいどういう訳であろうか。

 岐伯が答えて申された。
 
 経脉には、それぞれ常とする色がございますが、絡脉は常に一定しておらず、その時々の状況に応じて色が変化いたします。
 
 
 黄帝が申された。
 
 経脉の定まった本来の色とは、どのようであるのか。
 
 岐伯が申された。
 
 心は赤、肺は白、肝は青、脾は黄、腎は黒でありまして、これらは全て十二経脉の色に応じております。
 
 帝が申された。絡脉の陰陽もまた、十二經脉の色に応じているのであろうか。
 
 岐伯が申された。
 
 陰経の絡脉の色は、それぞれの經脉の色に応じております。
 
 ところが陽経の絡脉の色は、経脉の色に応じておらず、一定しておりません。
 
 それよりもむしろ、四時陰陽の盛衰に従ってその色を現します。
 
 従いまして、冬季のように寒が多いときは、気血の運行が渋りますので、青黒くなってまいります。
 
 また夏期のように熱が多い時には、気血の運行が盛んになりますので、肌も潤い艶も良くなりますので、黄赤となって参ります。
 
 このように陽経の絡脉の色の変化が、四時陰陽の盛衰に適っておりますれば、まずは病の無い状態と判断することが出来ます。
 
 ところが、五色の全てが現れておりましたら、寒熱が錯綜していると判断することが出来るのであります。
 
 帝が申された。
 
 なるほど、よく理解できた。

原文と意訳

黄帝問曰.夫絡脉之見也.其五色各異.青黄赤白黒不同.其故何也.
岐伯對曰.經有常色.而絡無常變也.
黄帝問うて曰く。夫れ絡脉の見れるや、其の五色各おの異にし、青黄赤白黒同じからず。其の故は何なるや。
岐伯對えて曰く。經に常色有り。而して絡に常無くして變ずるなり。

帝曰.經之常色何如.
岐伯曰.心赤.肺白.肝青.脾黄.腎黒.皆亦應其經脉之色也.

帝曰く。經の常色は何如。
岐伯曰く。心は赤、肺は白、肝は青、脾は黄、腎は黒、皆亦其の經脉の色に應ずるなり。

帝曰.絡之陰陽.亦應其經乎.
岐伯曰.
陰絡之色.應其經.陽絡之色.變無常.隨四時而行也.
寒多則凝泣.凝泣則青黒.
熱多則淖澤.淖澤則黄赤.
此皆常色.謂之無病.五色具見者.謂之寒熱.
帝曰善.

帝曰く。絡の陰陽も亦其の經に應ずるや。
岐伯曰く。
陰絡の色は、其の經に應じ、陽絡の色は、變じて常なし。四時に隨いて行くなり。

寒多ければ則ち凝泣し、凝泣すれば則ち青黒なり。
熱多ければ則ち淖澤なり。淖澤なれば則ち黄赤なり。
此れ皆常の色にして、これを無病と謂う。五色具(そな)わり見われる者は、これを寒熱と謂う。
帝曰く。善し。

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