鍼灸医学の懐

大便

1.傷寒

大便

 熱結傍流と云う有り、協熱下利と云う有り、大便閉結と云うあり、大腸膠閉と云うあり、皆邪裏にあるなれども其の証に不同あるは通ずると塞がるとの違いなり。

 脇熱下痢と云うは其の人、大便初よりしまらず、邪胃に入りて煩渇す。常の泄瀉の症の如くゆるきのみにて色かわらず、但焦色(コゲイロ)なり。

 此れ、伏邪胃に伝われども留まることならず。昼後より潮熱し、そこで泄瀉す。夜半ごろより熱さめ、泄瀉もやみ翌日は熱なく、下りもやみて快し。潮熱除かず、下りも止まざるは小承気にて余邪を逐えば利止むものなり。

 利止むこと二三日にて又昼後より煩渇し、潮熱を発し下ること前日通りになるは此れ伏邪の残りたるか、又胃に伝えたるなり。治法同前なり。

 大便閉結は邪裏に伝えて塞がりむして、宿糞めぐらずして結し、だんだん硬くなり、一度下せば瘀熱自ら除きいゆるものなり。

 熱結傍流は胃実にて内熱壅閉する故、大便先づとじて、夫れよりつづいていっそ悪く、臭き水ばかりにて糞のまじらぬを下す。

 日に二三四度、或は十度余にも及ぶ。此れは大承気にて結したる糞を下せば、立ちどころに利止む。

 若し承気にても結糞を下さずに臭水ばかりか、又は飲んだままの薬汁を下すは大腸の邪勝ちて伝送の官を失うなり。邪はやはり内に在りて病減ぜず、更に下すところなり。

 大腸膠閉はその人、平日大便のゆるき生まれにて邪胃に伝るに及んで蒸したばかりにて、極(きわめて)臭く膠の様な物を下す。死まで結すると云うことなし。

  いよいよむして、いよいよ閉じ胃の気下へめぐらず、夫れ故に邪の抜けどころなし。下さねば死より外なし、粘膠一たび去れば下証除きて平復になる。

 温疫愈て後、数日を経て腹いたみしぶりなどするは本病に非ず。別に痢病を催すなり。いよいよ痢とならば痢病門を見合わすべし。

 愈えたる後、大便通ぜず数日別に煩わしきこと無きは大腸虚燥して通ぜぬなり。攻めることに非ず。飲食も進み津液生ずれば自然に潤い下るものなり。若し頻りに肛門はらば、密煎導或いは六成湯なりとあれども、予は朱明丸を軽く用ゆるなり。

 病後、脉遅細にして弱、暁ごろ或いは夜半過ぎに極めて下るは命門の真陽不足なり。七成湯に宜し。或いは雑証のうちに実なるものあらば大黄丸に宜し。立ちどころに効あり。

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