六十二難曰
藏井滎有五,府獨有六者,何謂也。
然、府者,陽也。三焦行於諸陽,故置一俞,名曰原。府有六者,亦與三焦共一氣也。
六十二難に曰く。
臓に井栄は五有るに、腑は独り六有るとは、何の謂いぞや。
然るに.腑は、陽なり。
三焦は諸陽に行く。故に一兪を置き、名づけて原と曰う。
腑に六有るとは、亦た三焦と共に気を一つにすればなり。
臓には井・経・兪・経・合の五の要穴がある。
ところが腑には六の要穴があるが、これはどういうことだろう。
しかるに腑は陽であり、三焦の気は諸経にめぐっている。
この三焦の気を「原」として、一兪を五腑に加えているからである。
腑にある六の要穴はまた、三焦の気と共にひとつの気である。
六十三難曰
十變言,五藏六府滎合,皆以井為始者,何也。
然:井者,東方春也,萬物之始生。諸蚑行喘息,蜎飛蠕動。當生之物,莫不以春而生。故歲數始於春,日數始於甲。故以井為始也。
六十三難に曰く。
十変に言う、五臓六腑の滎合、皆井を始めと以てすとは、何ぞや。
然るに、井は東方の春なり。万物始めて生じ、諸は蚑行(きこう)し、喘息し、蜎飛(けんひ)し、蠕動す。当に生の物は、春を以て生ぜざるはなし.
故に歳の数は春に始り、日の数は甲に始まる。故に井を以て始めと為すなり。
古書の<十変>に、五臓六腑の滎合は全て井を始めとして、滎・兪・経・合と流れているが、これはどうしてなのだろう。
しかるに、井は東方で春に相当します。
東方・春は、万物が生じ始める時で、蚑(き=はう虫)は動き、息吹き、蜎(けん=青虫のように体を曲げる虫・ボウフラ)は飛び、全てが動き始める。
ゆえに1年は春から始まり、1年365日は、甲(きのえ=木の兄)から始まる。
そして経脉も、万物が生じ始める東方・春・甲(きのえ=木の兄)に相当する井をその始まりとするのである。
六十四難曰:
十變又言,陰井木,陽井金。陰滎火,陽滎水。陰俞土,陽俞木。陰經金、陽經火。陰合水,陽合土。陰陽皆不同,其意何也。
然、是剛柔之事也。陰井乙木,陽井庚金。陽井庚,庚者,乙之剛也。陰井乙,乙者,庚之柔也。乙為木,故言陰井木也。庚為金,故言陽井金也。餘皆倣此。
六十四難に曰く。
十変にまた言う。
陰の井は木、陽の井は金。
陰の滎は火、陽の滎は水。
陰の兪は土、陽の兪は木。
陰の経は金、陽の経は火。
陰の合は水、陽の合は土なり、と。
陰陽皆同じからず、其の意は何ぞや。
然るに、是れ剛柔のことなり。
陰の井は乙木、陽の井は庚金なり。
陽の井は庚とは、庚は乙の剛なり。
陰の井は乙とは、乙は庚の柔なり。
乙は木と為す。故に陰と言い、井木なり。
庚は金と為すが、故に陽と言い、井金なり。
余は皆な此に倣う(ならう)なり。
十変には、また以下のように言われている。
陰の井は木、陽の井は金。
陰の滎は火、陽の滎は水。
陰の兪は土、陽の兪は木。
陰の経は金、陽の経は火。
陰の合は水、陽の合は土であると。
これら陰経と陽経は井・滎・兪・軽・合の始まる順序が異なるが、その意味するところは、どういったことなのであろうか。
それは陽経と陰経、それぞれの剛柔を性質を表しているからです。
陰経の井は乙木(きのとの木=陰木)、陽経の井は庚金(かのえの金=陽金)です。
陽経の井が庚であるのは、庚(かのえの金=陽金)が乙(きのとの木=陰木)の剛であるからです。
陰の井は乙(きのとの木=陰木)であるのは、乙(きのとの木=陰木)が庚(かのえの金=陽金)の柔であるからです。
乙は木で陰ですから、陰経は井木となります。
庚は金で陽ですから、陽経は井金となります。
このようにして、後はすべて同様にしてみます。
以下、同様にして整理すると、
陰経 井穴 乙木 きのえ 柔
陽経 井穴 庚金 かのえ 剛
陰経 滎穴 丁火 ひのと 柔
陽経 滎穴 壬火 みずのえ 剛
陰経 兪穴 己土 つちのと 柔
陽経 兪穴 甲木 きのえ 剛
陰経 経穴 辛金 かのと 柔
陽経 経穴 丙火 ひのえ 剛
陰経 合穴 癸水 みずのと 柔
陽経 合穴 戊土 つちのえ 剛
となります。
六十五難曰:
經言所出為井,所入為合,其法奈何
然、所出為井,井者,東方春也,萬物之始生,故言所出為井也。
所入為合,合者,北方冬也,陽氣入藏,故言所入為合也。
六十五難に曰く.
経に言う、出ずる所を井と為し、入る所を合と為す。其の法は奈何なるや。
然るに、出ずる所を井と為すとは、井は東方の春なり。万物の始めて生ず。故に出る所を井と為すと言うなり.
入る所を合と為すとは、合は北方の冬なり。陽気入りて蔵す。故に入る所を合と為すなり。
経に言うところの、出ずる所を井とし、入る所を合とするとは、その法はどういうことなのか。
出ずるところを井とするのは、井の性質が東方の春に相当するからである。
東方・春は、万物が生じ始める時であるが故に、出ずる所を井というのである。
入る所を合とするのは、合の性質が北方の冬に相当するからである。
北方・冬は陽気が深く入って蔵される時であるが故に、入る所を合というのである。
コメントを残す