鍼灸医学の懐

虚煩似狂・神虚譫語・奪気不語・老少異治

1.傷寒

虚煩似狂

 時疫坐臥安からず、多足の置き処定まらず、臥と思えば直に起き、纔(わずか)に起きるとのめりまわり、又臥さんとす。

 少しの間もしずかなことなし。或は循衣摸床撮空撚指、医者来りて脉をとるに手を引き込みなんとしてよく見せず、六脉顕れず、尺脉応ぜず、是れ元来力不足なところあり。邪気にまけて元気持ち合うことならず。故に煩躁するなり。

 狂症にはあらず、其の危うきこと狂の段にはあらず。大補に宜し。さりながら急に下さねばならぬ症もあり。

 下後厥も回(まわ)り脉も応じ煩燥少しの間止むことあり。此れ邪気退くによりて正気を暫(しばら)く取り返したるなり。二時ばかりの内に邪気復たあつまり前証を発するに、前に下して効を得たりと思うて再び下すことなかれ。却って命をつめることあり。

 大事なり。急に峻補すべし。補のとどかぬものは死す。此の証に表裏ともに大熱なく、下証も備わらざるものには生ずることもあり。

神虚譫語

 下証を手延べし血気おとろえ煩熱譫語する。尤(もっと)も下証具したる故に数度下したとき、渇も熱も減じ、下証皆去り、五六日の後、譫語やまぬ者は実とすべからず。此れ邪気去りて元気の復せぬなり。清燥養栄湯に辰砂一匁を加えよ。

 鄭声譫語は様子に二つはなし。同様に見えて虚実でわけるなり。

奪気不語

 下して後気血ともに虚し、神思もうつうつとして人なき方に向きて睡(ね)むり、さて其の様子寝るかと思えば寝るでもなし、呼びてみれば挨拶もせぬは元気奪して正神うすくなりたる欤(や)、又は用ゆる所の薬が違いてあるかなり。

 何れにもあわただしき療治あしし。静かにまもるに若くはなし。元気漸(ようや)くかえれば気力そろそろ出るものなり。

 若し此を攻めれば脉必ず数になり、四肢も厥するに至る。此れ虚々の禍(わざわい)旦夕(たんせき、差し迫っているの意)にあり。

 凡そ此の病人に手合わせして表裏ともに大熱なくば、人参養栄湯にて補すべし。能く食事のなるは、やがて元気復して諸症みな除く。

 若し食乏しきは元気愈々(いよいよ)つきて危うし。峻補の症と知るべし。余、度々見るに跡にて微腫を発しなどして不治になるあり。

老少異治

 凡そ年高き人は何病にても、むさとつよき薬は用いられず。承気一貼は十貼にもむくう。參朮十貼は一貼にもむくわず。老人は元気只さえ乏しくなりがちで調えかねる。

 少年の気血盛んにして生長するの勢いは、邪気除くと忽ちに平生になる故、老人には瀉を慎み、少年には補を慎む。況や療治違うて補瀉を用ゆるは勿論のことなり。

 又萬に一つ生まれつきよわき少年あり。此は時に臨んで治すべし。常論にあらず。

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