陰陽応象大論は、基本的に押さえておくべき重要なことが多く述べられている。
今回は天人合一思想で述べられている。
五臓の気は、自然界の五行と相関があるという前提で論理が進められている。
自然界の天の気は、人間においては神気であり、その神気は五臓各々が生じる感情が表現される。この感情に節度がなかったり度が過ぎると生命が危ぶまれる。
また自然界の四季が乱れ、寒暑の度合いが過ぎ、また処し方を誤っても、これまた生命が危ぶまれると説いている。
東洋医学は、『心身一如』たる面目の一端である。
専門家は、これらによる人体の生理的変化と病理の法則性をつかみ取ると、病態把握がより正確になるであろう。
原 文 意 訳
天には春夏秋冬の四季と木火土金水の五行がある。
春は生じ、夏は長じ、秋は収め、冬は蔵する。
この天の四季の変化に伴って木火土金水の五気が生じ風寒暑湿燥の五気が生じる。
春は木で風、夏は火で暑、長夏(中国では湿気の多い季節)は土で湿、秋は金で燥、冬は水で寒といった具合である。
人においては、この自然界の天の働きによって生じた五気が五臓の働きに相当する。この五臓の気によって喜怒悲憂恐の感情が生じるのである。
人体の天の気である喜怒が過ぎると気が障害され、自然界の寒暑が過ぎると肉体を傷害するのである。
精神情緒の面から見ると、激しい怒気は、熱化して上昇するので血(けつ)を激しく消耗するので、陰血を傷害することとなる。
喜びという感情は、緩める作用があるので、激しく喜びが過ぎると気が散ってしまい陽気を傷害することになる。
気が滞り下降すべきものが上に一気に上に上ってくると、脈がいっぱいになって詰まって動かなくなり、神気は肉体を去ることになるので意識障害か死亡に至るのである。
喜怒に節度が無くほしいままにし、自然界の寒暑が度を過ぎていたり処し方を誤ると、生命そのものが危うくなるのである。
一方、肉体面に目を向けると、極まると転化する陰陽の法則のとおり、陰を重ねると必ず陽に転化し、陽を重ねると必ず陰となる。
従って、冬に寒に傷害されると春に温病となり、春に風に傷害されると夏に消化不良の下痢を起こし、夏に暑に傷害されると秋に寒熱が往来する瘧(おこり)となり、秋に湿に傷害されると、冬に咳嗽を生じるようになるのである。
原文と読み下し
天有四時五行.以生長收藏.以生寒暑燥濕風.
人有五藏.化五氣以生喜怒悲憂恐.
故喜怒傷氣.寒暑傷形.暴怒傷陰.暴喜傷陽.厥氣上行.滿脉去形.
喜怒不節.寒暑過度.生乃不固.故重陰必陽.重陽必陰.
天に四時五行有り。以って生長收藏し、以って寒暑燥濕風を生ず。
人に五藏有りて五氣を化し、以って喜怒悲憂恐を生ず。
故に喜怒は氣を傷り、寒暑は形を傷り、暴怒は陰を傷り、暴喜は陽を傷る。厥氣上行すれば、脉滿ちて形去る。
喜怒節ならず、寒暑度を過ぐれば、生は乃ち固からず。故に重陰すれば必ず陽。重陽すれば必ず陰。
故曰.
冬傷於寒.春必温病.春傷於風.夏生飧泄.
夏傷於暑.秋必痎瘧.秋傷於濕.冬生咳嗽.
故に曰く、
冬寒に傷れば、春必ず温病たり。春風に傷れば、夏飧泄を生ず。
夏暑に傷れば、秋必ず痎瘧たり。秋濕に傷れば、冬咳嗽を生ず。
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