鍼灸医学の懐

陰陽応象大論(五) – 大宇宙と小宇宙(15)

解説と意訳

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 この段では、より具体的に陰陽偏在の兆候を読み取る方法と手順が、簡明に記されている。
 
 早速、意訳してみることにする。


原 文 意 訳

 すぐれた医師は、患者の現す顔の気色や肌の色から、体内で何が起きているのかを察し脈が表現している気の状態をじっくりと味わうように診る。


 そうしてから、先ず患者の病が、陰陽のいずれに属するのかを判断するのである。


 そこからさらに、上下清濁を審らかにし、全体の状態を把握しながら、病んでいる部分を理解する。


 喘ぎや息づかいを意識的に視、患者の発する声の強弱や清濁に耳を傾け、苦しむところがどこにあるのかを知るのである。


 觀權衡規矩(けんこうきく=四季の脈状、脈要精微論に記載)、つまり四季の脈を基準にして、今現在患者の脈が四季の脈と反していることの意味を読み取り、病の根本がどこにあるのかを知る。


 つまり夏は体表の浅いところを脈拍つべきであるのに沈んでいたり、冬は深いところを脈拍つべきであるのに浅いところに浮いていたり、といったことである。


 脈の寸口・尺中を按じて、搏動部位の深浅、脈の去来が滑らかであるか渋っているかを観て、病の生じたところを知って、治療を施せば、過ちはない。


 つまり、まずは目で視、耳で聞き、指先の感覚を以て、陰陽の偏在をはっきりとさせることである。


 このように診察・診断を行えば、患者の精気を失うような失敗は無いのである。


原文と読み下し


善診者.察色按脉.先別陰陽.
審清濁.而知部分.
視喘息.聽音聲.而知所苦.
觀權衡規矩.而知病所主.
按尺寸.觀浮沈滑濇.而知病所生以治.無過.
以診.則不失矣.


善く診する者は、色を察っし脉を按じ、先ず陰陽を別つ。
清濁を審びらかにし、而して部分を知る。
喘息を視、音聲を聽き、而して苦しむ所を知り、
權衡規矩(けんこうきく)を觀、而して病の主る所を知る。
尺寸を按じ、浮沈滑濇を觀、而して病の生じる所を知り以って治すれば、過無し。
以って診れば則ち失せざるなり。


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