鍼灸医学の懐

陰陽応象大論(五) – 大宇宙と小宇宙(13)

解説と意訳

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 この段においては、天人相応思想を、具体的な事例を用いて説いている。

 荒唐無稽なこじつけと、捉えてしまえば、すべては台無しである。

 現象を通じて現象を起こしている、目には見えない気の動きをイメージとして掴み、

これをあらゆるものに応用したのが、東洋医学である。


 原 文 意 訳

 天には無形の精があり、地には形として存在する。


 天には四季八節があり、天気が下る地には五行がある。


 この天地の交流によって万物は生まれるのであるから、天地は父母のようなものである。


 無形の清陽は天に昇り、有形の濁陰は地に帰るのであった。
 
 そして天地の動静は、直接目には見えないが、明らかにそれと分かる神が、しめくくり、主っているのである。


 この神によって、天地の間に四季の変化が生まれ、生長収蔵の変化の循環が、延々と繰り広げられるのである。
 
 巷では、ただ賢人と称される人のみが、上は天にならって頭を養い、下は大地の在りようにならって足を養い、上下の中は、人間としてなすべきことに従って五臓を養うのである。


 天の気は肺に通じており、地の気は食道に通じている。


 風の気は肝に通じ、雷の気は心に通じ、穀の気は脾に通じ、雨の気は腎に通じ、それぞれ天地の気と臓の気は相応じているのである。


 三陰三陽の六経は川であり、腸胃は海である。


 水の清なるものは、頭部の上竅に通じ、水の濁なるものは下部の下竅に通じている。


 天地を以て、これを陰陽と為すのであった。


 であるから、人体の体液が熱せられると、上に昇って汗として発せられる。これを天地になぞらえれば雨である。


 人体の陽気は、全身を素早く巡っているので、天地になぞらえると疾風である。


 暴気は雷の現象であり、逆気は立ち上る陽気の現象にかたどるのである。


 このように、人体の生理は自然界の陰陽法則と相応じているのである。


 したがって、天の気の移り変わりの変化法則に法り、天に従って変化する地の条理を用いて治療すべきである。


 もし、これらに背くような治療を施せば、当然治らないどころか災害に至らせることになるのである。


 原文と読み下し


故天有精.地有形.天有八紀.地有五里.故能爲萬物之父母.
清陽上天.濁陰歸地.是故天地之動靜.神明爲之綱紀.故能以生長收藏.終而復始.
惟賢人上配天以養頭.下象地以養足.中傍人事以養五藏.
天氣通於肺.地氣通於嗌.風氣通於肝.雷氣通於心.谷氣通於脾.雨氣通於腎.
六經爲川.腸胃爲海.九竅爲水注之氣.
以天地爲之陰陽.
陽之汗.以天地之雨名之.
陽之氣.以天地之疾風名之.
暴氣象雷.逆氣象陽.
故治不法天之紀.不用地之理.則災害至矣.


故に天に精有り。地に形有り。天に八紀有り。地に五里有り。故に能く萬物の父母と爲す。
清陽は天に上り、濁陰は地に歸す。是れ故に天地の動靜、神明の綱紀と爲す。故に以って能
く生長收藏し、終りて復た始まる。
惟賢人は上は天に配し以って頭を養い、下は地に象どり以って足を養い、中は人事に傍(そ
う)て、以って五藏を養う。
天氣は肺に通し、地氣は嗌に通ず。風氣は肝に通じ、雷氣は心に通じ、谷氣は脾に通じ、雨
氣は腎に通ず。
六經は川と爲し、腸胃を海と爲し、九竅は水注の氣と爲す。
以って天地の陰陽と爲す。陽の汗、天地の雨を以ってこれを名づく。
陽の氣、天地の疾風を以ってこれを名づく。
暴氣は雷に象どり、逆氣は陽に象どる。
故に治するに天の紀に法らず、地の理を用ざれば則ち災害至るなり。


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