鍼灸医学の懐

四気調神大論(二)-秋・生活の要点(5)

解説と意訳

 秋は、下図のように春から夏にかけて、自然界の陽気が上・外へと次第
大きくり、秋になって下・内へと大きく気の流れの向きが変化する時期
です。

季節の消長


 この時期は、空気も澄んで夏の暑気も治まり、気持ち的にはやれやれ
と言った感じで鎮まる時期でもあります。自然界においては、収穫の豊か
さを味わう季節ですね。
 一日の内では、夕方になってひと仕事を終え、今日の仕事の成果を落
ち着いて振り返り、夜に向けて身の回りを整理して夜の安眠に向けて準
備する時間帯です。
 秋は草木が枯れて堅くなる気が支配して来るので、気を緩めて気持ち
を外に向けるのではなく、旅行から家に帰って来て、ホッとするような鎮静
をイメージし、心を安定させるようにバランスをとるのがよろしい。
 春の緩め方とは、少し異なりますが、下図をイメージしながら意訳文をじ
っくりとお読み頂いて掴んで頂くと、よろしいかと思います。


秋収斂・下降


 原文意訳
 秋の季節、すなわち立秋から立冬までの3カ月を容平(ようへい)と称し、
この季節は物の形が定まってくる時期である。私たちの実生活では、
収穫の豊かさを感じる時期であり、冬眠をひかえた動物は身を太らせて、
冬に備える時期でもある。
 自然界の空は、次第に寒気を感じるようになるので、私たちの感覚とし
ては徐々に引き締まって来るかのようである。また、空気も澄み渡り紅葉
が始まる大地は、はっきりとして爽やかに感じる。
 この秋から夜が長くなり、昼は短くなってくるので、それに合わせて早寝・
早起きするのがよい。朝は鶏が日の出を告げるころに起き始めるのが良
い。
 心は、あれこれ思わすに気を鎮めて緩め、安定させるのがよろしく、
そうやって万物を堅く収縮させ、枯れ死させる刑罰を思わせるような秋の
気とバランスを取るようにするべきである。
 つまりあれもしなくては、これもしなくてはといったように、心を忙しく散乱
させるのではなく、秋の引き締まる気に応じて気ぜわしく動き回らないよう
に努めるがよい。
 そのようにして、散と収の気を上手にバランスを取り、心や気持ちを外
に向けないように心掛けることが大切である。そのように過ごせば、
自ずと呼吸も乱れず、心身共に安定してくるのである。
 これが引き締まって物の形が定まる秋の収気に応じることであり、そう
することで人の元気もまた散じてしまわず、しっかりと収めることが出
来る。これこそが秋季の過ごし方の要である。
 この秋の気を無視すれば、肺の臓を傷る。そうなると冬になってから、
未消化の下痢を起こす泄(そんせつ)という病になる。
 そうなってしまうと、冬間に、体内に陽気をしまい込むことが出来なく
なってしまい、寒気に傷害されやすくなってしまうのである。
 そうなってしまうと、ほとんどの人は、冬に精気を十分温存することが
出来なくなるのである。

原文と読み下し
秋三月.此謂容平.天氣以急.地氣以明.早臥早起.與倶興.使志安寧.以緩秋刑.
收斂神氣.使秋氣平.無外其志.使肺氣清.此秋氣之應.養收之道也.
逆之則傷肺.冬爲泄.奉藏者少.
秋三月、此を容平と謂う。天氣は以って急し、地氣は以って明(あきらか)なり。早く臥し早く起き、
と倶に興く。志しをして安寧ならしめ、以って秋刑を緩める。神氣を收斂し、秋氣を平らしむる。
其の志し外にすること無く、肺氣をして清ならしめる。此れ秋氣の應、收を養うの道なり。
これに逆えば則ち肺を傷る。冬に泄(そんせつ)を爲す。藏を奉ずる者少なし。


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