ブログ「鍼道 一の会」

性を養う(1)大體第一③

医心方

性を養う(1)大體第一③
 仲長統は、後漢末期の学者、昌言二十四篇を著したそうですが現存していません。一部でもこういうのが残っているのが又、医心方の良さですね。
 
 素問・異方法宜論第十二では、五つの方角による特徴を記していましたが、ここでは南北、寒暑だけで区別し、詳細の状況を描いています。

「北方は寒いが人は長生きしている。南方は暑いが人は早くなくなる。これは寒暑の方角での人の感受性の違いで蚕と同じである。」
寒くて飢えれば陽の火を求める事が多く、温かくて食べ飽きていれば陽の火を使う事が少ない。」

  これは寒暑飢飽によって人の本能的な行動が異なり、そこに修練の長短、元気、穀気が関わって寿命の長短になる事を示している。
 道機というのが、人なのか調べたが何も分からず、出て来たのは俗界から離れた修道でのひらめきという意味でした。それはさておき、

道機は
「人の生命に長短があるのは自然ではない、養生してないからであり、飲食の不相応、性欲の節制、陰陽の法則に逆らっているから短くなる。養生を怠れば魂魄や心神が散逸し、精根尽きて生命力が衰え、様々な病気となって天寿を全うできないのである」

 と言っている。この生命観に関しては、一理はありますが、個人的には天寿には稟賦によって長短があると思うので、ここでは意見を差し控えておきます。
 稽康は竹林の七賢の一人、晋代の人です。老荘思想の研究で「隋志」、「晋書」等にも書かれています。その為、若干世俗から離れた意見と思いながら、自分の身に落とし込む事が大切です。

 ここでは五難として五種類の命にとって良くないことを示してくれています。

「名前や利益、格などに拘っているのが一難、感情に溺れすぎるのが二難、女色に溺れるのが三難、食事の節制ができないのが四難、心神を使いすぎ、精を漏らしすぎるのが五難であり、この五つがあると、心の中でどれだけ年を取らないように願い、口で立派なことを言い、美しく美味しいものを食べ、太陽の精気を呼吸しても、節操がなく、短命となるのである。

 反対にこの五つが胸中になければ、良い事をしっかりと信じて、道理に適う生活を送り、徳行を日々全うし、喜びがもたらされ、祈らずとも福が訪れ、長寿を求めずとも自然に長生することが出来る。これも養生の大道であるそして慈しみの心と正しい行い(仁義)を心がけ、正しい関わり合いを持たないものはその次に位置する」

 と言っています。
 ここで、医心方巻之一の治病大體第一を思い出して下さい。読んでない人は又読んでみて下さい。道理に適う生活、養生はそのまま治療家の志に通じます。利益や格は治療のやりやすさに直結します。例えば名前が売れている、商売になる等は職業としては魅惑的な言葉です。ただ、そこに足を取られていると病の本質にはたどりつけないのです。なぜなら、自分が養生できていないのに人を治そうとする事は欲のなせるわざであり、仁の心ではないからです。しかしながら、完璧な人等はそうそういませんので、次の項にそのことが記載されています。
原文と書き下し文
又云、仲長統曰、北方寒而其人寿、南方暑而其人夭。此寒暑之方験於人也。均之蚕也。寒而飢之則引日多、温而飽之則日少、此寒暑飢飽修短験乎者也。
 嬰児之生衣之新纊則骨蒸焉、食之魚肉則虫生焉、串之逸楽則易傷焉。此寒若動移之使乎性也。

 又云う、仲長統が曰く、

「北方は寒し、而してその人寿なり。南方は暑し、而してその人夭なり。此れ寒暑の方の人に験あるなり。

 之れ蚕と均しうするなり。寒くして之を飢えすむれば則ち日を引くこと多く、温かくして之を飽かしむれば則ち日を用ふること少なし。

 此れ寒暑飢飽の修短の為に物に験あるものなり。

 嬰児の生まれたるに、之に新纊を衣すれば、則ち骨蒸すなり。

 之に魚肉を食わしむれば、則ち虫生ず。

 之を逸楽に串はせば、則ち傷つき易し。此れ寒苦の之を動移して、性たらしむるなり」、と。
又云、道機曰、人生而命有長短者非自然也。皆由将身不慎飲食過差淫泆無度、忤逆陰陽、魂魄、神散、精竭、命襄百病萌生故不終其寿也。

 又云う、道機が曰く、

「人の生まれて命に長短あるは自然に非ざるなり。

 皆、将って身を慎まず、飲食の過差、淫泆度なく、陰陽に忤逆するに由る。

 魂魄、神散じ、精竭きて、命衰へ、百病萌生するが故に、其の寿を終わらざるなり」、と。
稽康養生論云、養生有五難、名利不玄一難也。喜怒不除二難也。声色不玄三難也。滋味不絶四難也。神慮精散五難也。五者必存難心希難老口誦至言、咀嚼英華、呼吸大陽、不能不曲其操、不夭其年也。五者無於胸中則信順曰済、玄徳曰全、不祈喜而有福不求寿而自延。此亦養生之大経也。然或有服胸仁義、無甚泰之累者抑亦其亜也。

稽康の養生論に云う、
「養生に五難あり。名利を去らざるは一の難なり。

 喜怒を除かざるは二の難なり。

 声色を去けざるは三の難なり。滋味を絶てざるは四の難なり。

 神慮、精の散ずるは五の難なり。

 五者必くも存すれば、心に難老を希がい、口に至言を誦し、英華を咀嚼し、太陽を呼吸すると雖も、其の操を曲げず、其の年を夭せざること能わざるなり。

 五者胸中に無くんば、則ち信順日に済り、玄徳日に全く、喜を祈らずして福あり。寿を求めずして自ら延ぶ。

 此れ亦、養生の大経なり。然して、或いは仁義を服膺し、甚泰の累なきことある者は、抑って亦、其の亜なるなり」、と。




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