ブログ「鍼道 一の会」

四時と人間の相関― 3.秋‐収

自然に、美しく枯れていく


3.秋‐収 【秋・・・収める気】

 秋の季節、すなわち立秋から立冬までの3カ月を、古来これを容平と言います。春に芽生え、夏に盛んに成長し、秋になって万物が堅く引き締まり、形が定まる季節という意味です。

 秋は、下図のように春から夏にかけて、自然界の陽気が上・外へと次第に大きくなり、秋になって下・内へと大きく気の流れの向きが変化する時期です。図 1-A


図 1-A
 この時期は、空気も澄んで夏の暑気も治まり、気持ち的にはやれやれと言った感じで鎮まる時期でもあります。

 自然界においては、収穫の豊かさを味わう季節です。

 一日の内では、夕方になってひと仕事を終え、今日の仕事の成果を落ち着いて振り返り、夜の安眠に向けて準備する時間帯です。

 春の緩め方は、気持ちを外向きにして伸び伸びとさせるイメージなのですが、秋は内向きにして旅行先から帰宅して、ホッとするような緩め方のイメージです。

 このようにして秋の収気とのバランスをとり、心を安定させます。

 古典には、イメージしやすいように以下のように記されています。

 <秋からは夜が長くなり、昼は短くなってくるので、それに合わせて早寝・早起きするのがよい。

 朝は、鶏が日の出を告げるころに起き始めるのが良い。

 心は、あれこれ思わずに気を鎮めて緩め、安定させるのがよろしく、万物を堅く収縮させ、枯れ死させる刑罰を思わせるような秋の気とバランスを取るようにするべきである。

 つまりあれもしなくては、これもしなくてはといったように、心を忙しく散乱させるのではなく、秋の気に応じて気ぜわしく動き回らないように努めるのがよい。

 このように、散と収の気を上手く調和させ、心や気持ちを外側に向けないように心掛けることが大切である。

 そのように過ごせば、自ずと呼吸も乱れず、心身共に安定してくるのである。
 これが秋の収の気に応じることであり、そうすることで人の元気もまた散ずることなく、しっかりと収めることが出来る。これこそが秋季の過ごし方の要である。>

 秋になると自然界の気の流れは、春夏の生・長の気から、一転して収・蔵の気に転化するので自然界と同様に、身体の気の流れも一変します。

 この時期は、心身を穏やかに鎮静させ、陽気を温存させることが大切です。

 また、秋は日が暮れると急激に気温が下がるので、夜間にやたらと動き回り自然界の枯れ死させる気に触れないようにします。

 一日の内では、夕暮れに相当しますので、今日一日の仕事を片付け、夜に向けて次第に心を鎮め行動も穏やかにして過ごしたいものです。

【身体に現れる変化】

 身体の変化としては、夏の過ごし方が秋になって表面化します。

 秋の季節は、気の流れが外から内へ、上から下へと大きく変化しますので、秋のさわやかさの反面、体調変化の現れやすい時期でもあります。図 1-3

図 1-3

 夏に冷飲食や発汗過多で陽気を傷り、身体に余分な水分を溜め込んでいる場合、秋の気によって、まるで雑巾を絞るかように鼻水が大量に出たり、軟便・下痢、風邪を引きやすいなどの傾向が現れます。

 反対に、夏季の発散・発汗が十分でなく、また飮食が肉・油脂、香辛料に偏っていると内熱を生じます。

 秋の乾燥によって、内熱を持った身体の肌は乾きやすく、かさつくようになり皮膚疾患は悪化します。


 内熱が激しく出口に殺到した場合、毛穴が閉じているので喘息、冷えのぼせ、めまい、脱毛などが現れやすくなります。

 秋は来るべき冬に備え、心や感情を高ぶらせることなく穏やかに、また過度に発汗して陽気を損なわないようにすることが、この時期にふさわしい養生法です。



一の会

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